個展「雨の名前 Written on Water」のご案内
梅雨の季節に、屋外の雨と共振するインスタレーションと絵画を、2つのスペースで展示します。
どうぞお立寄りください。
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雨の名前 / Written on Water
人間は古来より、雨や雲などの気象現象を感じ取り、多様な呼び方で表現してきた。日本には雨の名前が四百語あるとも言われている。ただ空から落下する水滴の、差異を感受して表現したそれらの雨の名前は、人間らしさを示す象徴とも言えるだろう。
一方、現象としての雨は、
雨-地下水-湧き水-川-海-水蒸気-雲-雨…
と姿を変えながら、地球の表層と大気圏のあいだをダイナミックに循環する水だ。私たち生物は、その循環のただ中に存在し、その水によって生命を維持している。
雲から落ちてゆく水滴の視点で地表を俯瞰したらどんな光景がみえ、循環する水の様々な現象はどのような様子なのか? これらを想像するとき、水滴から聴こえるのは…
ワタシハ、ワタシダ…
2011年、東北に起こった大地震は、福島生まれの私の人生観も表現の意図も変えた節目だった。私は、東北人と世界の北方人との共振を探る「精神の〈北〉へ」プロジェクトを開始した。
自然災害はその後も頻発し、翻弄されるヒトはか弱く小さく感じるが、ヒトは森羅万象について深慮し、その全体を捉えようと研鑽を続ける知的生物だ。自らの叡智をつかうべきは、征服欲によってヒト同士が殺し合う方法ではなく、地球の現象にしなやかに添いながら、災害や未知のウィルスとの遭遇も乗り越えられる方法だろう。
ヒトがあらゆる他者と共存しながら人間らしく生きていくためには、どのように存在すればいいのだろうか。私は、ひとりひとりが小さな「考える葦」として、ヒトの世界の理不尽や愚かさを直視し、広い視野で考え誠実に行動するなら、少しずつ前進できると思う。