交差点に潮騒が聴こえる
仮説《交差点は人間のさまざまな思念に洗われる浜である。》
大都市の繁華街メインストリートの大きな交差点に、人の波が行き交う。
大勢の見知らぬ他人同士が短時間に一斉に行動する、都市の中でもとりわけ人口密度の高い場所である。集団となって渡る他人同士は肩が触れるほどの至近距離にいながら、それぞれが傍目には伺い知れない全く個人的な思考、感情の中にいる。作品の中での鬼は、前作(2001年「荒ら野の鬼からの証言」)同様、自分を取り巻く社会の中で疎外感、喪失感を感じ、自分自身を鬼と思い込んでいる人である。彼らに人間への蘇生は成るか?
“寄せる/引く”を規則的に繰り返す交差点は、人間のさまざまな思考、感情、生きることの機微に洗われた浜なのである。
(「思想の図書館」展は、参加アーティストが独自の仮説を立てて表現する企画)