サナギのとき 1311    2013
撮影:大谷一郎
布、竹、レンズ、ワイヤー、他
L.1250cm, W.512cm, H.259~442 cm サイズ可変
板橋区立美術館/東京
[発信//板橋//2013 ギャップ・ダイナミクス]
春のある日、山椒の葉にアゲハの卵を見つけ、観察を始めたその生態は、驚きと不思議に満ちていた。変化に富む行程のなかでとりわけ不思議なのが、青虫から蝶になる間の蛹の時期だ。這い回る幼虫期とは異なり、死んだように無反応になる、ファラオの棺のような形の蛹。その内部では、全く異なる体に生まれ変わるために、青虫の体をどろどろに解体する大改造、つまり細胞の死と生成とが同時進行しているらしいのだ。臨死のような蛹のときを越えて、殻を破り、羽をつけて現れたアゲハが澄んだ明けの空に消えたとき、その姿は、変わろうともがいている私達人間に、アゲハが身をもって示した“生まれ変わる手本”のように思える。
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