2012年12月03日
「IN HER CASE」 トキ・アートスペース企画シリーズ 個展
消費される女らしさではなく、物事の有り様を鮮明にすることに取り組む女性作家のシリーズ。1年を通して7人の個展のうち、Vol.7として開催します。
vol.1~7の作家:
廿野英利子・高橋理加・エサシトモコ・小林花子・瀬戸理恵子・笠原由紀子・丸山芳子
丸山芳子展 「蛹のとき ~変わろうとする私たち人間を重ねて~」
会期/ 12月3日~12月16日 水曜日休廊 11:30-19:00 最終日16:00まで
会場/ トキ・アートスペース
東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1F tel&fax: 03-3479-0332
春のある日、山椒の葉にアゲハの卵を見つけ、観察を始めたその生態は、驚きと不思議に満ちていました。変化に富む行程のなかでとりわけ不思議なのが、蝶になる直前の蛹の時期です。それまでとは打って変わって、死んだように無反応になる、ファラオの棺のような形の蛹。その内部では、全く目的が異なる体に生まれ変わるための、細胞の死と生成の同時進行、つまり、幼虫の体をどろどろに解体する大改造が行われているらしいのです。臨死のような蛹のときを越えて生まれ変わる小さな姿に、変わろうともがいている私たちの姿を重ねてみます。
誰に教わることもなく、一連の手順を一途に実行して見せた8匹のアゲハが示したのは、”生きる”姿でした。そして9匹目の存在。1匹のみ落下によって命を落としたことは、野生のたくましさの影としてある命の脆さも示し、その1匹によってこの世の真実を見た気がしました。
長い蛹のときを経て、殻を破り、羽をつけて現れたアゲハが意を決したように飛び立ち、澄んだ空に消えたとき、その姿は、アゲハが身をもって人間に示した“生まれ変わる手本”のように思えるのです。