水とともに
表面積の71%が海である地球に生きることは、水による様々な現象のただ中に生きるということなのだろう。人間にとって災害にもなりうる津波や台風は、水惑星の自然現象に過ぎない。大気圏の白い柔らかいベールとそれらの現象は、遠目には美しい光景に見えるだろう。
丸山の作品として、紀元前から現代まで、人類が残した水害(津波、台風、洪水)の記録のまにまに漂う木の葉は、ヒトを含む地球上のあらゆる生物を象徴する。この表現は、地表で起こった水の現象と人間の関わりの歴史を、視覚化する試みである。
津波の高さや津波を起こした地震の大きさは、人間が関与できない自然の現象だが、死者数などの被害の程度には、時代ごとに進歩する人間の対応能力が反映される。また、現象や被害を数値化する精度も、同様である。これらの変化を内包する水害の記録は、自然現象に対応した人間、水と人間との関わりの現れと言える。
記録の海を漂う木の葉/生物の体もまた、多くの水を含んでいる。私たち生物は、時々水に翻弄され、それに抗いながらも、水と心地よく融和して生きている。
この作品は、人類が残した世界の水害の記録をロープで表している。
黄色ラインで区分された最前列が現代、最も奥は紀元前11000年までさかのぼる。
緑色ラインによる左右の区分は、左から東南アジア、中国、日本、南北アメリカ、ヨーロッパの地域を示している。
白く太いロープの長さで水害の規模を示し、細い薄茶色のロープの本数で、水害の犠牲者の数を示す。細いロープを形成する糸の1本が、およそ10人である。