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心のことば

会津地方に2ヶ月あまり暮らして印象に残ることのなかに、人々が生産に取り組んでいる会津在来種の棉(わた)と、それから生まれる会津木綿、そして、この棉をめぐる壮大なサイクルがある。 八十代になる方が、お嫁入り準備のときに母親から教わったその手仕事は、棉の栽培に始まり、収穫した棉の種を除き、綿打ちし、糸を紡ぎ、染色し、たくさんの機織り準備工程を経て、機を織り、ようやく着物を縫う。着物として用いた後は、寝間着やおむつに再利用し、次に雑巾にし、最後は燃やして灰にし、それを畑にまいて次の棉を生む…。一昔前まで、この地域の女性が家族のために営んでいた、緻密で根気の要る膨大な手仕事の積み重ねが、棉を巡る果てしないサイクルを形成する様を想像してみる。

作品展示の場である三十八間蔵は、もとは荒物商人蔵であり、農家の冬期の副業として作られた日用品を買い取り、収納していた。これらの品々の多くも会津木綿と同様に、自然からいただく素材からの手仕事によるもので、日々の暮らしの中で丹念に作られたことだろう。

人々のことばに接する時、この地域に伝承される様々な物や事を織り込みながら繰り返す日常の、心の機微を感じる。心から発せられたことばを集めると、様々な色糸の集合がつくる会津木綿の色彩のように、この地域の人々の総体に近づける気がする。

3.11から2年。変化を余儀なくされた福島・東北を見続け、寄り添いながら、人々の精神性を探して行きたいと思う。