万物のサイクルの上で

善福寺公園に今も残る武蔵野扇状地の末端の地形。この大地形成の現象を調べるさなか、地球はM9.0の身震いをした。人間にとっては脅威でも、これは大きなサイクルで繰り返す自然現象に過ぎず、人間は、その表層でほんの一時を生きる生物だ。廃墟から立ちあがり、この天地宇宙の万物にしなやかに添って生きていこう。

展覧会の会場である善福寺公園は、住宅地に取り囲まれた都市公園だが、西の関東山地の谷から広がる武蔵野扇状地の末端の地形を今に残している。その地形にあたる西側の斜面に、山からこの地まで流れて善福寺池を湧かせた伏流水を視覚化した。
この水の流れに、もうひとつのテーマを込めた。
1000年に1度といわれた3月11日の震災は、地球表層のプレートがひずみを解消したことで起こった。それは、これからも何度も繰り返されるだろう。私たちを取り巻く自然現象のサイクルー天体の運行、地殻変動、季節による動植物の営みなどー、一定の規則を持って繰り返される長大な時間の流れを、ストイックに連なるデータのような流れとして表した。
流れの中に漂う木の葉は、人間を含むあらゆる生き物を象徴し、この時間の長さに比べれはささやかな存在だが、生命体のエネルギーにあふれ、限られた持ち時間を精一杯燃焼する姿を見せている。