スコットランドとの交流計画 2021
2020年2月、ロヴァニエミ美術館での「精神の〈北〉へ」を終了させて帰国した際、フィンランドも日本も、空港はものものしい雰囲気に包まれていた。多くの人がマスクをし、緊張していた。
それから一年以上もの間、地球は新型コロナウィルスという未知の疫病に覆われた。私たち人類はみな同じ舟に乗り合わせて共通の困難をのり越えようとしている。コロナ禍は人類にとっての災禍だけでなく、人類と他の生物との共存について再考しなさいとの警告のように思える。そして疫病は、人間同士の格差や差別意識も浮き彫りにした。
私たちは今、これまでの意識や慣習をゼロから見直すべき節目にある。今こそ、互いの立場や違いを理解し、精神の深いところの共鳴を導き出そうとする「精神の〈北〉へ」のような活動が必要なのだ。
今年の交流相手である英国スコットランドとの活動では、私たちは交流に欠かせない「直接会う」ことをコロナ禍に阻まれ、その制約のなかで、可能な交流の方法を見出そうとしている。
東北や北方の国とのゆかりが深い日本人4名と、英国の北方であるスコットランドの4名が、1対1のペアを組み、半年間のコミュニケーションを継続している。ユーラシア大陸の東と西の淵という距離を超えて、互いに共鳴する精神性を見出そうと試み、そこから得られるものを作品に反映させようとしている。その表現には、会えないからこそ、互いのことを知ろうと真摯に向き合うコミュニケーションの成果が現れるだろう。
スコットランドの都市や北方の島々と、福島県会津地方の2市町をつないで開催する展覧会では、深い交流の成果としての両国8名の作品を展示する。コロナ禍というハードルを越えるために、チャレンジングで、プロセスと思考そのものが根幹となる交流活動。世界とつながる新しい方法を見出すために、果敢に挑戦する参加作家たちの取り組みだ。
交流のハイライトとして、両国の会場同士、または会場と作家のスタジオをオンラインでつなぐ4回の催しや、シンポジウムでの講演やディスカッションもご期待いただきたい。
精神の〈北〉へ :ふたつの流れが出会うところで
Spirit of North: Confluence
【アーティスト】
日 本/丸山 芳子、滝沢 達史、浅井 真理子、丸山 常生
スコットランド/ スー・グリアソン、ジリアン・アデア・マクファーランド、カイラ・クレッグ、インゲ・パニル
【開催内容】
日本とスコットランドが同時に連携して開催する日英共同企画
◇両国作家8名の、交流成果の作品
・インスタレーション、映像、写真、絵画、立体作品、パフォーマンス、これらのコラボレーション
・ペア間の対話&交流の経緯紹介
◇プロジェクト過去10回の開催のアーカイブ(映像、記録集、写真など)
◇オンラインの対話交流催し:各開催にて
◇子供の異文化体験アート教室:10/3(日)・10/17(日)
◇シンポジウム:10/17(日)
講演「北と惑星思考」結城正美氏(青山学院大学 文学部英米文学科教授)
【4回の開催スケジュール】
◆ 2021年6月1日~27日:「精神の〈北〉へ vol.11」(スコットランド展)
パース市:Perth Creative Exchange(複合的なアートセンターのギャラリー)
◆ 2021年9月4日~11日:「精神の〈北〉へ vol.12」(スコットランド展)
シェトランド諸島:Gaada(シェトランド諸島のBurra島にあるコミュニティー・スペース)
◆ 2021年10月3日~17日:「精神の〈北〉へ vol.13」(日本展)
福島県喜多方市:南町2850・絵本の蔵・二十間蔵(喜多方市南町 伝統的建造物群保存地区)
◆ 2021年10月22日~29日:「精神の〈北〉へ vol.14」(日本展)
福島県西会津町:西会津国際芸術村(レトロな木造校舎の文化施設)
⇆同時開催 10月23日~11月6日「精神の〈北〉へ vol.15」 (スコットランド展)
ストーノウェイ町:An Lanntair(スコットランド北方ルイス島のアートセンター)