渇き ー水と征服を求めてー

1189年、奥州平泉の藤原氏を滅ぼし、関東に凱旋した源頼朝が、飲み水を求めて弓で地面を突き、ここ善福寺池の源泉となったと伝えられている。その弓は彼の支配への渇望と水への渇望を象徴する。そしてそれは人間の普遍的な欲望なのだろう。

この場所は、善福寺池周辺に湧き水があった複数箇所のひとつに位置するらしい。立ち入る人が少なく、820年前に刺した弓が樹々の影のなかにひっそりと残っていた…そんな仮定を可能にする雰囲気がある。後光と静けさが時を越えさせる。
弓の背後に、光の中を静かに過ぎて行く騎馬の列。
古代から現在まで、尽きることなく繰り返される戦闘、消えて行った命の数々。

 

この野外展と同時期に、福島県立博物館にて開催した[はじめる視点 -岡本太郎の博物館/博物館から覚醒するアーティストたちー]でも作品を発表した。その制作準備として常設のなかからコラボレーションする展示物を選ぶ際には、東北人としての誇りである平泉藤原氏にちなむジオラマを選んだ。しばらくして、善福寺池の伝説に、その藤原氏が直結していることに気付いたとき、鳥肌が立ちそうだった。勝者と敗者、双方向から史実をみつめた。

[はじめる視点]での作品「たたかいの人類史」の詳細は>>こちら